浜松市の公共施設再配置計画

浜松市の公共施設再配置計画

先日、TBS系列で放映された『噂の東京マガジン』の中で、52年にわたって浜松市民に愛されてきた「はまホール」の存続問題が取り上げられました。

これは、こちらから取材してくれと依頼したのではなく、TV局サイドがホール閉鎖の新聞記事を読みコンタクトがあったと聞いております。
関係者の方から、取材の打診があるのだけれどと相談を受けた時、(大変失礼な言い方かもしれませんが)マスコミは面白おかしく取り上げるので取扱いには十分注意をしたほうがいいとアドバイス申し上げました。
また、「マスコミを利用した」と言われるのもあまり本意ではありません。

この問題を一番最初に一般質問で取り上げた私にも担当ディレクターから取材申し込みがあり、議員という立場から事実のみをお話しさせていただきました。一般質問の議会ネット中継録画(12月2日)も事前に見られており、煽り立てるようなスタンスでは全くありませんでした。
http://www.discussvision.net/hamamatsusi/2.html
私は、今回のこの放送は片方に決して偏ったものではなく適正な伝え方であったように思います。

近年、高度成長期に建設された建物・インフラが老朽化しており、トンネルのつり天井の崩落事故に代表される劣化による事故が今後予想されます。
また。3・11以降、地震倒壊防止のため、古い構築物のあり方について加速度的に検討されています。
これに加え、人口減少・少子化・超高齢化時代を迎えるにあたり、将来、補修費が負担となる公共施設の再配置計画が検討され、浜松市でも指針が出されました。
この計画の中で最たるものが「はまホール」だったわけです。
「はまホール」は廃止の方針が示されたわけですが、実は将来の市の負担を軽減するために地域の小規模施設もそのあり方が問われています。
公会堂・公民館・コミュニティーセンター・集落センター等様々な呼び名で呼ばれている地域の集会所は、そのお金の出どころや使い方で多種多様ですが、市から自治会に無償譲渡する流れがあります。
一見、ただでくれるのならそんなに良いことはないと思われがちですが、修繕が発生した場合、これがすべて地元住民の負担になってしまうので、このままにしておいてくれないかと私のところにも声が届いています。
私の住む自治会のようにお金を出し合い、はじめから自己所有だったところからすれば、それはずるいということになるのですが・・・。

さらに問題は深刻です。
地域の集会所を伝統文化の拠点・発信基地として使っている自治会もあります。
私の実家がある引佐町の横尾地区、東四村農村改善センターがこれにあたります。
浜松市が誇る横尾歌舞伎は江戸時代から200年余にわたり伝承され、静岡県の無形民俗文化財に指定されている農村歌舞伎ですが、この定期公演はこの東四村農村改善センターで行われています。
この農村センターは、普段は町の集会場ですが、歌舞伎の練習場・公演会場として利用するときは、「開明座」と言われ、市内各地のみならず県外からも多くの歌舞伎ファンが訪れます。
また横尾歌舞伎資料館も隣接しており、貴重な資料が保管されています。
この開明座と横尾歌舞伎資料館も例外なく市の財産から放出され、所有権が地元自治会に移転されようとしています。
地元の方の話によれば、これを譲り受け、そろそろ寿命が到来するエアコンが故障した場合200万円ほど出費がかかるのではと懸念しています。
この施設を自治会が支えきれなくなれば、伝統ある横尾歌舞伎の存続にも赤信号がともります。

ここで考えたいのは、一律にどこも同じ手法で譲渡してしまい、その後は「お任せ!」になっていいのかということです。

まず一つ目は、その建物の本質・役割をしっかりと見極めることだと思います。
前述の開明座に関していうならば、横尾歌舞伎は浜松市が誇る伝統芸能であり、様々な媒体に掲載して自慢の種となっております。
これは「はまホール」とて同じであり、活躍する各種団体の写真を利用して「浜松の音楽はこんなにすごいぞ!」と発信しています。
しかし、現実はその底辺を支えてきた草の根の団体が活躍する場を取り上げようとしているのです。
もう一度申し上げます。その建物がどんな活動をしてきたのか、どんな位置づけにいるのか、しっかりと検討することが大事です。
今回、「はまホール」騒動がこんな大きくなったのも、そこを軽視し市民の意見を全く聞かなかったからではないでしょうか。

また、2つ目として、自治会と一言で言っても、1500世帯もあるようなところもあれば、わずか20世帯それも殆どが老人世帯である自治会もあります。防犯灯も自治会負担でLED化をすすめることになっていますが、これも小規模自治会にとってはつらいところです。
しっかりと中身を精査していただきたいと思います。

「あなたの町のあの施設を潰すよ。今後はちょっと不便だけど我慢してね」と言って、「はいそうですか」と納得する方は誰もいません。
みんな近くにあって、活動しやすいのが一番です。
ただ、合併した浜松市は明らかに公共施設が多いのは事実です。
わたしは何でもかんでも残せと言っているわけではありません。
しかし、今の浜松市はスクラップ&ビルドではなく、スクラップ&スクラップになっています。
建物の取り壊しとともに、思い出や活動意欲までもすべて消えていきます。
孫子の時代につけを払わせるような財政状況は一刻も早く脱却しなければいけませんが、必要なものはしっかりと残す必要があると思います。
私たちは委員会で様々な案件や予算案を熟慮しています。
もっと削減できるものは削減する、これは予算を付けた方がよいと思うものは増額を提言するなど行政にモノ申しています。

あれもこれも全て公に頼る時代は終わりました。
「公助から自助へ」わたしたち市民も意識を変えていかなければなりません。
箱モノ行政と公共工事は、悪の象徴のように言われますが、文化と切り離すことはできません。

しかし、市政運営においてすべてを削り「文化」を忘れた時、自信をもって「浜松市が好きだ!」と言えるのでしょうか?

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